トップ野球部訪問記北海道あつべつ〜北海道遠征記Vol.2〜>駒大苫小牧高校野球部

1球への執念

駒大苫小牧
   高校野球部

 札幌から特急で約40分揺られて着いたところは苫小牧。
北海道胆振支庁にあたるこの地域は雪が少ないことで有名だ。
だが、私がうかがった日はタクシーの運転手さんも
「困ったねぇ・・・すごい雪だよ」と運転に悪戦苦闘するほどの積雪だった。
交通量の多い道から、ややそれたところに駒大苫小牧はある。
土曜の朝8時、学内は除雪車の音が響くばかりで深閑としていた。

校舎とグランドの間に広大な室内練習場(普通の体育館なみ)が立っている。
寮から歩いてきたたくさんの部員と玄関でばったり。
「こんにちわ!監督室にどうぞ!」
ササっとスリッパを取り出し、まだ誰もいない監督室に案内してくれた。
さすが慣れているな、と思ったが、それは決してマスコミや日々訪れる来客者への
対応の慣れからではないことが後々わかってくる。
少し待って監督室を出て見ると、長靴とスパイクがきれいに並べられていた。
このようにこの日一日だけでも、駒大苫小牧らしい
人間像を随所に見ることができる。


ただただ感動。私の靴まで入ってるし・・・

この日は釧路にある霧多布(きりたっぷ)高校と合同練習の日。
彼らが到着するまでは、チームを二つに分けて筋トレ。
室内練習場の2階にはトレーニングルームも完備している。
OGの橋本聖子さんの輝かしい功績の跡も。
選手は音楽をかけながら、そして時には歌いながらのトレーニング。
この日何度も繰り返しかかっていたのは
ザ・ベイビースターズの「SUNDAY」。
ゴスペラーズの「ミモザ」を声を枯らしながら歌う子もいて、和やかな雰囲気だった。
練習場内の片隅では、香田誉士史監督と引退した3年生部員がラン系のトレーニング。
こちらもかなり必死。大きなボールを使ったり、各自工夫しながら励んでいた。

 
筋トレルームの隣にはミーティングルームも      座り込むOBたち。沢井、糸屋、桑島、佐々木優が来てました

部員わずか7人の霧多布高校が到着すると、55人の部員は玄関で出迎えた。
もちろん霧多布高校が緊張しているのは見てわかる。
香田監督は部員を集めて言った。
「これから一緒に練習する相手に対して、ぼけーっと突っ立てるだけとは
失礼だ。何か言葉をかけてあげるとか、相手の気持ちを考えろ」
その場にいなかった部員も「なになに?」と注意を受けた内容を聞きに来た。
選手たちの表情は“そっかー・・・”という反省したものに変わった。


投手陣はハイレベルな争いだ!

こんなこともあった。
私が空き缶を捨てに行こうとしたところ、多くの部員がその道を塞いでいたため
捨てに行くことができず。すると、それに気付いた部員が
「捨ててきます!」と缶を持っていった。
また、OBは一足先に上がったが、帰る際に
わざわざ私のところまで来て「お先に失礼します」と言っていった。
とても気持ちが良かったことは言うまでもない。
こういった相手の気持ちを考えた行動は、野球の試合でもいかされる。
相手の嫌がるような攻め、味方が取りやすいような球を投げる.....
振り返ると、駒大苫小牧の試合で暴投や送球ミス(エラー)は本当に少ない。
彼らの強さは、技術以前に人間的・精神的土台がしっかりしているからだと
改めてわかった。

合同練習がスタート、林裕也主将を先頭にきれいに4列になり
室内練習場内を走る。掛け声は先頭から順番に。
「1、2、3、4ー!」
間隔を空けても、列が乱れることなく、足並みもピタっと揃っている。
みんなの気持ちが、ピンと張られた一本の長い糸のように見えた。
その大きな声と練習に対する意識の高さは、室内と感じさせないものがある。
それを監督に言うと、「そういう練習を目指している」。
上着も脱ぎ捨てることはなく、きちんと畳んで椅子の上へ。
それをマネージャーの矢内勇介くんがこれまたきれいに並べるのだ。
ケンカボール(速いキャッチボール)では
リズムが1、2、3、4ではなく1、2、3。
ボールを受けたところを「1」ではなくて、ボールを受けて手に取ったところを「1」とする。
取ったと同時に球をつかむ、ここが「1」になる。
だからワンテンポ速くボールが行き交うというわけだ。
(よくわからない方は実際にやってみよう!)

ダッシュ系種目をやるにも十分な広さだ。
あらゆるパターンのトレーニングを、4列ほどに分かれて行う。
足の上げ方やフォームのおかしな子はみんなの前でもう一回。
室内は爆笑の渦となる。

駒大苫小牧は積極的に次の塁を陥れようという野球、隙のない野球を展開するが
「半日ずっとやっていることもある」くらい走塁練習に力を入れている。
この日は監督自ら投手役、牽制の練習。
部員は多いが、後ろの方で順番を待つ選手もしっかり見ている。
監督は、後の徳之島合宿で全員にチャンスを与えているように
選手たちには常に競争心を持たせている。
5日練習に出ないだけで焦るという話も聞いた。
選手も毎日必死だ。


走塁練習はこんな位置関係で。ランナーは7、8人いっぺんに

 
ナイスキャッチ!                        まずは内野を集めて説明

「いや〜本当に多いわ・・・」
茶木圭介副部長と茂木雄介コーチが交互でグランドを除雪作業。
内外野の雪がどっさり外野スタンドに山になっている。
(余談だが除雪車を扱うには大型免許が必要だそう)
その上でノックが始まった。
たまにツルっと滑ってしまうこともあるが、そんなのお構いなし。
外野もとにかく走らせる。
おかしな連係プレーが出ると、監督の声が響く。
「なんでそこに投げるんだよ!?」
恐らく、多くの高校の場合、選手がそのまま立ち止まったままで
監督の言うことにYESかNOとしか答えない。
ここは違う。ちゃんと選手が理由を説明する。
試合形式の練習では、ボールを使わないことも多いそう。
理由を言うにしろ、ボールなしで走塁練習をするにしても
本当に野球を知らないと練習にはついていけないだろう。
実際についていけずに辞めていく選手もいる。
田中将大くんは「体はもちろんだけど、頭を使っている」
(ボールなしでの練習は今回見ることができなかったが、ぜひ見たい)

 
室内の左半分はマシンとトスバ、右半分はいきた球を打つように分けられている

その頃、室内ではバッティング練習。
しかし、マシン1台だけがネット裏に常備?してある。
これを日々持ち運びするのが1年生外野手のお仕事。
「雪が邪魔してなかなか進まないんです(苦笑)」
神宮で2本も本塁打を放った本間篤史くんのメガネが白くなっていた。
懸命に押し進めていると、後ろから茶木先生の乗った車が!!
こんなハプニングも北海道らしい。


茶木先生の車に追われるマシン運び隊(笑)

17時近くなると、特大の釜に入ったご飯とパック納豆が登場。
毎日一杯食べているという。
(林くんはその上にふりかけをかけて食べていた)
ご飯を作るのは学年関係なしで当番制。
「やばい日はグチャグチャなんですよ・・・今日のは上手いです!」
苫小牧の子以外はほとんど寮住まい。
林くんや五十嵐大くんの弟たちも入学予定の新1年生のことも考え
今度、もっと近いところに新しい寮が建てられるそうです。


ねばねば。醤油はもちろんボトルでした

朝9時からほぼノンストップで18時まで練習は続いた。
もちろん部員全員で霧多布高校を送り出す。
最初は同い年なのに敬語を使いあっていた。
だが、冗談を言い合うなど、両校の間にあった溝は無くなっていた。
 上がっていく選手は、監督室に寄り挨拶をして
お決まりナンバーワンの指。首脳陣も「はい」と指を立てる。
自主練習していく選手は21時近くまで残る。
実戦形式を多く取り入れた合宿は1週間後。
大舞台にむけたメンバー争いは、もう始まっている。


ブレるから騒がないの!って言ったのに・・・


おまけ☆

*Special Thanks  江口昌隆部長、香田誉士史監督、茶木圭介副部長、茂木雄介コーチ
             駒大苫小牧高校野球部の皆さん、地主勇人監督、霧多布高校野球部の皆さん、
             この場をお借りして、本当にどうもありがとうございました!

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