トップ野球部訪問記500mのライバル>富士宮西

球を大切に
する

 富士宮駅からバスで約15分。“西高”前で降りて
住宅街を歩いていくと、いきなり校舎が目の前に飛び込んでくる。
静かな正門を抜け、生徒たちの声が聞こえるほうへ向かうと
ここにも広大がグラウンドが広がっていた。
手前にはテニスコート、サッカー部が練習している姿も。
その奥に鮮やかな深緑のフェンスが見えた。
グラウンドの校舎側は階段になっており、その上に校舎が建っている。
クラスの窓からしっかりグラウンドの様子が見渡せる
なんとも高校らしい高校だ。

どこからともなく選手たちが走ってきた。
全員白い練習着で統一されており、背中にはローマ字で名前も入っている。
今年は2年生が緑、1年生が紺色、全員で31人。
「こんにちわ!」と礼儀正しく挨拶をしてくれた。
こういった富士宮西ナインは、秋の県大会で確認済み。
1回戦の常葉学園橘戦、サヨナラ勝ちをおさめた選手たちに話を聞きに行くと
しっかりと相手の目を見て、自分の考えを話してくれた。
宮西はその後も勝ち進み、県を制し、東海大会への切符を手にした。
そのときの喜びを、西川吉樹主将はこうあらわしている。
「僕たちは監督が大好きなんです。
練習は厳しいけど、すべてに真剣で一生懸命な日本一の監督と一緒に
甲子園に行きたいです」
私事だが、この頃全国各地の高校の度重なる不祥事に
甲子園なんて無くてもいいんじゃないか、と一人で葛藤していた。
そこへ救いの手を差し伸べるかのように、西川くんの言葉を読んだ。
こんな信頼関係を持ったチームは、全国にどれだけあるだろうか。


レフト側より。手前に見えるのが階段

坪内一哲監督。
富士高のときには甲子園出場も果たし、宮西に移って17年目になるベテランだ。
「人間野球じゃないけれど、野球を通じて
やっぱりね、社会に出ていくために必要な人間を育てていきたい」
選手たちも、その思いに答えようとしている気がする。
 監督がネット裏のスタンドにじっと座りこんで見守るなか
冬のトレーニングメニューが始まった。
タイヤ押し、タイヤ投げ、その投げ方も上から斜めからさまざまだ。
その合間に腹筋などを鍛え、それを繰り返していく。
縦横同じ間隔に並んだ姿がなんとも美しい。
こういったトレーニングメニューは、何か面白いことがあったりすると
笑ったり、会話が出たりするものだが、宮西には無い。
目の前の練習にものすごく集中しているのだ。
移動のときには「さあ走れ!」という声が聞こえてくる。
白に統一された練習着、等間隔の並び、整頓されたベンチの私物、
この緊迫感溢れる練習は、休みなしで朝9時から15時までつづいた。

 
タイヤ斜め投げは腰の動きがポイント       タイヤ上投げバージョン。タイヤによって重さが違います 

今度はバッティング練習。
スクールカラーの紫色のジャージを着た選手はケガで練習に参加できない子たち。
彼らも練習に“参加”するために、マシンにボールを入れるときは
「いきまーす!」と、お腹から思い切り声を出していた。
約8人でグループを作り、各バッターが4台のゲージに入っていくのを繰り返す。
彼らの後ろには坪内監督と影山英伸部長先生。
影山先生はちょうど今の2年生たちの代から、宮西の部長を務めている。
そして、ネット裏では女子マネジャーの赤野光さんが
各打者のヒット性の当たりをチェックしている。
ノートには○×印がずらり。それを打率計算して、調子の良し悪しをチェックする。
今日一番の好打率は前嶋龍司くんで打率.735だった。
外野で守りにつく選手たちも真剣そのものだ。
「レフト来いよー!」「なんだ今の当たりは?!」
ゲキを飛ばす声が多い。もちろん打球を追うときも全力疾走。
正直バッティングのときの守備は適当なところが多いが、宮西は試合中も同然だ。

 
この表情から練習の充実ぶりがうかがえる           バッティング練習。         

ふと三塁側を見ると、ピッチャー陣がネットにむかって投げ込み。
狭いスペースを有効利用していた。
坪内監督もエースの石川祐也くんの後ろに立っているが
投げ終わるまでは何も言わない。
全員のバッティングが終わると、卒部した3年生の大江弘志くんがやって来た。
4月から創価大野球部に入部予定の大江くん。
「アピールできるのは・・・バッティングです!がんばります!」
創価大には、4年生に深澤誠投手、1年生に勝又一樹投手もいる。
 あっという間にゲージなどが片付けられると
内野陣は素手による守備練習。坪内監督自らボールを転がしてネットスロー。
外野は影山先生によるアメリカンノックだ。
この頃になると、女子ソフト部がレフト付近で練習を始めた。
彼女たちの笑い声は、ピンと張り詰めた野球部のほうによく響いていた。

 
後ろの子のように手を開いて感覚を確認する子がたくさんいた         2人の場合は交互に投げ込んでいく

グラウンド裏にある室内練習場に移動。
今日は筋トレだ。筋トレは楽しくやるものだとどこかで聞いたことがあるが
宮西はここでも真剣そのもの。自分に対してとても厳しい。
室内には数を数える低い声と、体力の限界に耐える声が飛び交うだけだ。
宮西も筋力トレーニングに力を入れており、富士宮北同様に下半身の
しっかりした選手が多い。
それは、最後のメニューとなる監督オリジナルの下半身強化トレからもわかる。
最初と同じように、横一列にきれいに並んだ選手たち。
西川主将の「1本目!」の掛け声でスタートしたトレーニング。
「1・2・3、2・2・3、3・2・3、4・2・3…」とちょうど10まできたあたりがゴールで
これもさまざまな種目を入れていく。
「1・2・3」の声も統一されていて、今でも頭のなかで繰り返されている。

 
西川くん、がんばってます        トレーニング中の先輩に叫ぶ深澤くん

五厘率が高い宮西野球部。
公式戦前には自然と五厘になるが、普段も多いことがわかった。
五厘で、しかも半袖で目立っていたのは1年生の深澤賢一くん。
彼は自分のトレーニングが終わると、先輩のところへわざと近づき
大きな声を出して喝(?)を入れる。(右上写真参照)
終わってスタート地点に戻ってきた選手同士も
「三國ーー!」とか「西川ーー!」とお互いを叫び合っては気合いを入れている。
このときばかりは選手の表情からも笑みがこぼれる。
「けっこう面白いんですよ」とニコニコしながら掃除をしている赤野マネジャー。
今度はチームを組んで、一斉にタイヤを持ち出してきた。
紐をつけて、リレー方式の競争が始まった。
ラインを越えていないと外野フェンスまで走らなければいけない罰があるが
全員しっかりと越えていた。ただ、紐が絡まっておかしなことになっている
グループがあり、そこは確か最下位になってしまった・・・

 
飛んだり足をのばしたり                              走れ!

「この冬にやってきたことを、実戦で出せるように。
もうそろそろ、そういう時期になってきたぞ」
秋王者の驕りは微塵にも感じられない宮西。
“監督さんと甲子園にいきたい”
春には叶わなかったこの夢を、夏には実現させるつもりで
今日も厳しい練習をこなしているはずだ。


元気いっぱい!西川くんだけ1が2つ。横澤達也くんは自分の1にむかって吠えてます


みんなで仲良くダウン

*Special Thanks  坪内一哲監督、影山英伸部長、富士宮西高校野球部の皆さん、
             この場をお借りして、本当にどうもありがとうございました!

SEO [PR] 爆速!無料ブログ 無料ホームページ開設 無料ライブ放送