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選手一人ひとり
周りの見えるチーム

千葉駅から外房線で45分の成東駅。
市町村合併で昨年3月に誕生した山武(さんむ)市の南に成東高校はある。
のどかなバス通りから奥まったところで
歴史を感じさせる門が出迎えてくれる。
九十九里を見守り107年の伝統校だ。

グラウンドへ向かう途中には道場、体育館、合宿所、
屋外プール、テニスコート、サッカー場、そして広大な陸上部のトラックなど
さまざまな運動部の施設が並ぶ。
トラックは近隣の高校にも公開しているほどの充実ぶりだ。
野球部のグラウンドは施設の一番奥に位置する。
外野には杉の木が並び、ネット裏後方には野菜畑が。
そして、グラウンドを覆うように桜の木が春を待っている。


外野方向よりホームを望む

約30年前に完成したとされるグラウンドは
センター120mと十分すぎる広さを持つ反面、
古くなった金網や鉄製の巨大鏡など若干時代を感じさせるところも。
これがいい味を出している。
ライト後方には立派な室内練習場が。
平成元年に甲子園出場した際に集められた寄付金で建てられたものだ。
甲子園では初勝利をあげるなど、ネット裏まで埋った成東ファンは
大フィーバーだったという。
なぜなら、ここまでの道のりが長く、険しく、儚いものであったからだ。

昭和47年、エース・鈴木孝政を擁した成東は夏の本命であった。
甲子園まであと2勝とした準決勝、相手は強豪・銚子商。
屈指の好カードを見ようと天台球場に押し寄せたファンは3万人。
球場に入れないファンが入り口のシャッターを取り壊して押し入ったそうだ。
試合は8回に銚子商がもぎ取った1点が決勝点となり
成東は0−1で惜敗した。
この試合は今でも語り継がれる名勝負の1つだという。
大会を制した銚子商は甲子園でベスト8まで進出した。
そこから両チームはなんと4年連続で対決し、4試合とも成東が1点差で敗れているのだ。
時は流れ平成元年、準々決勝でまたもや銚子商とぶつかった成東。
延長戦の末に勝利し、そのまま悲願の甲子園を決めたのであった。
奇しくも、優勝旗を手渡したのは悲運時代を率いていた松戸健・元監督。
そして今、2度目の出場を狙うのは就任3年目を迎える卒業生の岩名地総監督だ。


校舎の前にある出場記念碑

私はそんな歴史も詳しく知らず
昨夏、偶然成東の試合を観戦した。
逆転試合という試合内容もさることながら
試合の余韻に浸ることなくキビキビと対応するナインを見て惹かれた。
秋も足を運ぶ。学校から1時間以上かかる天台での試合だったが
スタンドには引退した3年生ほぼ全員の姿があった。
それを見て「温かみのあるチームなのだろう」と感じた。

昨夏の千葉県大会vs松戸六実戦
昨秋の千葉県大会vs八千代松陰戦


バット、グラコン、ヘルメット、トンボときれいに並ぶ。
ホワイトボードにはタイトルの「選手一人ひとりが周りの見えるチーム」とある


室内練習場にあった靴箱。使用しなくても、しっかり整頓されてあった

朝9時。38名の選手たちはすでにアップを終えてキャッチボールを開始していた。
この日は今年に入って2度目の合宿だった。
朝5時半に起床し軽く体操、朝食をすませ1日強化練習。
夜はお母さん、女子マネジャーさんたちの温かい手料理がある。
1月は3泊、今回の2泊は紅白戦が行われた。
その前にノックだ。
実はものすごい強風が吹き荒れる1日だった。
後に、ある選手が「花粉がすごくて目が開けていられないので
ちょっと目を洗ってきます!
」と言うほど外野付近は砂と花粉が舞っていた・・・
ボールに近い選手が位置を教えろ!」「ボールに対して執念がない!」と
外野ノックでは監督さんのちょっぴり高めの声がよく響く。
ふと、観客席に4月に入学が決まった中学生が見学に来ていた。
岩名地監督が近づき名前を尋ねると「合格おめでとう!」とお祝い。
しかもすごく嬉しそうに言うのだ。
聞いているこちらまで嬉しくて合格した気分になってしまった。

紅白戦。3チームに分けて、3試合6イニングずつ。
全員出られるようになっている。
試合に出ない選手はベンチ前で立って声を出す。
審判はこの日来ていた大学受験を終えた3年生たちだ。
首脳陣が「全部やらんでいいぞ」と言ってもやり続けていた。
そして、試合と試合の合間には彼らが率先してトンボをかける。
この時期に後輩を気にかけグラウンドに来て
1日中審判して準備を整える3年生なんて、今まで見たことがない・・・。
試合中、いたるところから「ゆるめー」の声が聞こえてくる。
ゆ・る・め・?
実はこの冬から取り入れた“ゆる体操”の影響だ。
力む体をリラックスさせることを「ゆるむ」と表現している。
きっと試合でもベンチからは「ゆるめー」のかけ声があるはずだ。


時節見せる笑顔が印象的だった投手


良かったところ、修正してほしいところ。監督さんの言葉に耳を傾ける部員たち

紅白戦の試合進行は選手たちに任せている。
なんでこの子たちバントやらないのかな(笑)?」と首脳陣たち。
案の定、送りバントを試みるも成功率はやや低い。
指摘を受けた第2試合は決まるようになってきた。
ゼロゼロゼロだー!」と大声を出していたのはマスクをかぶる内山優主将。
声の大きさ、自分がプレーしていないときの率先したゲキなど
顔と名前が一致しなくても、すぐにこの子が主将だとわかった。
そのくらい存在感がある。捕手一人でチームが引き締まるとはこのことだろう。

時刻は夕方6時をまわった。
照明が届くのは内野まで。各自ポジション別になって課題練習が始まった。
岩名地監督は外野へ走りアメリカンノック。
夕食の7時を前に、ダウン。みんな一斉に合宿所へ走っていった。
バッテリーがしっかりしているし、強くなると思います!」とは
帰りのバス停まで送ってくれたある3年生の話。
例年以上の戦国千葉に成東が一石を投じようとしている。

※チーム方針により、個人名の掲載は監督・主将のみとさせていただきました。

*Special Thanks  部長先生、副部長先生、岩名地総監督、成東野球部の皆さん、
             この場をお借りして、本当にどうもありがとうございました!

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